5月に修正済みのVPNの弱点が、ランサムウェアの侵入口に パロアルトネットワークス製品の事例から考える「更新の遅れ」
多要素認証を設けていても、入口の機器そのものに穴があれば素通りされる
米パロアルトネットワークスの調査部門は10月19〜20日、5月に修正版が出ていたVPN機能の脆弱性が、複数のランサムウェア集団に使われていると更新した報告で明らかにしました。多要素認証を飛び越えて社内に入られる種類の弱点で、修正済みでも更新していない機器が狙われています。VPN機器の更新を後回しにしている企業への警告といえます。
まず、これだけ押さえたい
- 5月に修正版が出ていたパロアルトネットワークス製VPN機能の脆弱性が、QilinやINCなどのランサムウェア集団に使われていると10月19〜20日に報告されました。
- 多要素認証を回避してVPNに入られ、仮想化基盤を経由して社内のアカウント情報を抜き出された事例があります。
- 社外とつながる機器の版と更新状況を把握し、悪用が報じられた弱点は最優先で更新する体制が必要です。
押さえておきたい数字
修正版の公開から報告更新まで
約5カ月
修正版は2026年5月、ランサムウェア関与の追記は10月19日
基準時点: 2026年10月
経営への示唆編集部の分析
ランサムウェアの侵入口は、社外とつながるVPNなどの機器であることが多く、修正版が出ていても適用されていなければ攻撃は続きます。更新は業務停止をともなうため現場では後回しになりがちです。経営として、社外接続機器の一覧と更新状況を定期的に報告させ、更新のための停止時間をあらかじめ確保しておくことが、被害の可能性を下げる現実的な手段になります。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
何が分かったのか
修正版が出てから約5カ月たった脆弱性が、ランサムウェア集団の確実な侵入口になっています。 米パロアルトネットワークスの調査部門Unit 42は、同社のファイアウォール用OS「PAN-OS」のVPN機能(GlobalProtect)にある脆弱性CVE-2026-0257について報告を更新し、10月19日にランサムウェア集団の関与を加えました。名前が挙がったのは、Qilin(キリン)とINCと呼ばれる集団などです(Unit 42(外部サイトが新しいタブで開きます))。
この脆弱性は、本来の利用者でない者がVPN接続を確立できてしまう種類の弱点です。修正版は2026年5月から提供され、米国の政府機関CISAは5月13日に「悪用が確認された脆弱性」の一覧に加えています。
なぜ今、問題になっているのか
更新されていない機器が、時間をかけて狙われ続けているためです。 Unit 42は6月上旬から攻撃の試みを観測しており、狙われているのは修正も回避策も施していない機器だと説明しています。標的は教育、金融、医療、製造、政府、運輸・物流、電力・エネルギー、小売など幅広い業種に及びます。
米メディアのCybersecurity Diveによると、セキュリティ企業ReliaQuestの幹部は、公表から約5カ月で、この弱点がランサムウェア集団にとって「確実な侵入方法」になったと述べています(Cybersecurity Dive(外部サイトが新しいタブで開きます))。
侵入されると何が起きるのか
入口を越えられると、社内の重要なシステムに短時間で手が届きます。 Unit 42の報告によると、攻撃者は多要素認証を回避してVPNに接続し、社内の調査や認証情報の窃取、データの持ち出しを経てランサムウェアを展開しています。ある事例では、仮想化基盤(複数のサーバーをまとめて動かす土台)に移り、そこでセキュリティ対策を止めたうえで、社内全体のアカウント情報を抜き出していました。各サーバーに入れた監視ソフトを迂回できる方法だとしています。
企業はどう受け止めるべきか
「多要素認証を入れたから安心」とは言えないことを示しています。 多要素認証は、盗まれたパスワードでの不正ログインを防ぐ有効な対策です。しかし今回のように入口の機器そのものに弱点があれば、その仕組みを経由せずに入られます。
VPN機器で確認したいこと
社外からつながる機器(VPN、ファイアウォール、リモート接続装置)の一覧と版、最後に更新した日、更新の担当者。修正版の公開から適用までの日数を把握し、悪用が報じられたものは最優先で更新する。
編集部は、こうした機器の更新が業務停止をともなうために後回しにされやすい点に、構造的な課題があると考えます。更新のための計画停止の枠をあらかじめ確保しておくことが、経営として決められる対策の1つです。
経営会議で確認したい3つのこと
- 社外からつながるVPNやファイアウォールなどの機器について、版と最終更新日が一覧で把握されているか。
- 悪用が報じられた脆弱性について、修正版の公開から自社での適用まで何日かかっているか。
- 機器の更新に必要な計画停止の時間を、事前に確保する仕組みがあるか。
用語の補足(4語)
- VPN
- 社外から社内ネットワークに安全につなぐための仕組み。入口となる機器はインターネットに公開されています。
- 多要素認証
- パスワードに加えてスマートフォンでの確認など、複数の手段で本人確認する仕組み。
- 仮想化基盤
- 1台の物理的なサーバーの上で、複数のサーバーを仮想的に動かす土台。ここを押さえられると多くのシステムに影響が及びます。
- CISAのKEVカタログ
- 米国のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁が公表する、実際に悪用が確認された脆弱性の一覧。
根拠資料・出典
一次資料
二次報道・参考
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月30日 18:00
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