台風25号で千葉の停電が長期化 「倒木と道路寸断」が復旧を阻む構図と、企業の停電対策の見直し方
9月21日夜に関東へ最接近した台風25号で、東京電力パワーグリッドのエリアでは最大約6万2700軒が停電し、千葉県では倒木や土砂崩れで現場に入れず、復旧見通しを示せない地域が多く残りました。2019年の房総半島台風と同じく、停電の長さは「被害の規模」より「現場に近づけるか」に左右されます。事実を整理し、5年の視点で企業の備えを分析します。

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
3分で分かる要点
- 台風25号で東京電力パワーグリッドのエリアでは最大約6万2700軒が停電し、9月23日時点でも千葉県で約2万3500軒が停電していました。
- 倒木や土砂で道路がふさがれ、設備の確認や作業ができない地域では、復旧見通しを示せない状態が続きました。
- 2019年の房総半島台風でも電柱被害の約74%は倒木などが原因で、総務省は事前伐採が十分に普及していないと指摘しています。
- 企業は拠点ごとに進入路や周辺樹木の条件を点検し、長期停電を想定した非常用電源と復旧手順を備える必要があります。
経営への示唆
停電対策は「何時間で復旧するか」を電力会社任せにするのではなく、「自社の拠点に復旧作業が届くまでに何日かかり得るか」から考える必要があります。今回の千葉のように、広域の停電がほぼ解消した後も、道路事情によって一部の地域だけが長く取り残されることがあります。拠点ごとに立地条件を点検し、長期停電を想定する拠点には非常用電源と燃料、復旧時の点検体制を重点的に配分することが、限られた投資で効果を上げる現実的な方法です。
何が起きたか
台風25号は2026年9月21日夜に関東地方へ最接近し、各地に土砂災害や冠水の被害をもたらしました。東京電力パワーグリッドのサービスエリアでは、9月22日0時19分に最大約6万2700軒が停電しました。
東京電力ホールディングスの9月23日17時時点の発表では、停電は約2万3700軒まで減ったものの、そのうち2万3501軒が千葉県に集中していました。原因は主に、土砂崩れや倒木、樹木が配電設備に触れたことです。同社は千葉県内の設備確認を一部を除いて終えたうえで、①設備は確認できたが、倒木や土砂で道路がふさがれ作業ができない地域、②立ち入りができず設備の確認もできない地域が多数あるとし、これらの地域では「現時点で復旧見通しを示せない」と説明しました。それ以外の地域は9月25日中の復旧を目指すとしていました。復旧には約1770人の要員と電源車23台を投入していました(9月23日9時時点)。
電気新聞によると、停電は9月24日16時29分時点で約1万4700戸まで減りました。
国土交通省は10月1日、営業倉庫やトラックターミナルなどの物流施設に非常用電源設備を導入する費用を補助する事業(補助率2分の1以内、上限1500万円)の二次公募を始めました。受付は11月30日までです。
なぜ起きたか
千葉県では2019年9月の台風15号(房総半島台風)でも大規模な停電が起きました。総務省行政評価局の報告書(2025年3月)によると、このときは千葉県を中心に電柱1996本が折れるなどし、東京電力管内で最大約93万戸が停電、解消まで約2週間かかりました。電柱被害の約74%は倒木などによるものでした。
これを受けて2020年に電気事業法が改正され、一般送配電事業者10社は、倒木対策などで自治体と連携することを盛り込んだ「災害時連携計画」を共同で作り、国に届け出ることになりました。ただし同報告書は、停電を防ぐための事前伐採(電線に倒れかかるおそれのある樹木をあらかじめ切ること)は、被害を経験した後に行われることが多く、十分に普及しているとは言い難いと指摘しています。課題として、自治体と送配電事業者が話し合う場をつくることと、伐採が必要な候補箇所などの情報を送配電事業者が自治体に提供することの2点を挙げました。
今回の停電の規模は2019年より小さいものの、「倒木や土砂で現場に入れない」ことが復旧を長引かせるという構図は共通しています。
何が変わるか
企業にとっての影響は、次の三つに整理できます。
1. 停電の長さは立地で大きく変わる:今回、早く復旧した地域と見通しが立たない地域を分けたのは、道路が通れるかどうかでした。山あいや郊外にあり、進入路が限られる工場・倉庫・店舗・通信設備は、広域の停電が収まった後も取り残されるおそれがあります。
2. 電線が直っても電気が来ないことがある:東京電力は、配電網が復旧しても、低圧線や建物への引込線の断線、建物内の設備の不具合で停電が続く場合があると注意を呼びかけています。自社敷地内の設備点検の体制がなければ、再開はさらに遅れます。
3. 物流と取引先への波及:物流拠点が止まると、自社が被災していなくても供給が滞ります。国が物流施設の非常用電源に補助を出しているのは、災害時の物資輸送の拠点として電源を確保する必要性が高まっているためと考えられます。
どう行動すべきか
経営として、次の順に見直すことをお勧めします。
- 拠点ごとの「アクセス」を点検する:停電の起きやすさだけでなく、進入路が1本しかない、周囲に樹木が多い、土砂災害の警戒区域に近いといった条件を拠点ごとに洗い出し、長期停電を想定する拠点を決めます。
- 非常用電源と燃料の確保:長期化を想定する拠点には、非常用発電機の容量と運転可能時間、燃料の補給手段(契約・備蓄)を確認します。物流施設であれば、国交省の補助(11月30日まで受付)の活用も選択肢です。
- 復旧時の手順を決める:通電時の漏電や火災を防ぐため、ブレーカーを落とし電熱機器のプラグを抜くといった手順を拠点のマニュアルに入れ、敷地内の電気設備を点検できる業者との連絡体制を整えます。
- 地域の倒木対策に参加する:自社が所有・管理する土地の樹木が電線に近い場合、自治体や電力会社が進める事前伐採の話し合いに協力することは、自社と地域の停電リスクを同時に下げます。
今後どうなるか
以下は事実ではなく、公表資料をもとにした見通しです。確率は示しません。
基本シナリオ:台風や豪雨による停電は今後も毎年のように起き、多くは数日で復旧する一方、倒木・土砂で現場に入れない地域では長期化が繰り返されます。電力会社と自治体による事前伐採や道路啓開の連携は、被災を経験した地域から順に進みます。企業側では、取引先や保険会社から拠点ごとの停電対策を問われる場面が増えます。
改善シナリオ:今回の経験を受けて、自治体と送配電事業者の協議の場や伐採候補箇所の情報共有が他の地域にも広がり、電線の地中化や配電網の強化も進みます。長期停電の発生地域は徐々に絞られます。
悪化シナリオ:豪雨と台風が続けて襲う災害が増え、地盤の緩みによる土砂崩れで道路と電線が同時に断たれる事態が広がります。復旧要員の確保も難しくなり、長期停電が起きる地域が増えます。
予測対象期間
2026年10月〜2031年9月
変化を見極める指標
- 台風・豪雨時の最大停電軒数と、全面復旧までにかかった日数(各一般送配電事業者の発表)
- 自治体と一般送配電事業者による事前伐採の協定や実施地域の数
- 国交省の物流施設向け非常用電源導入補助の採択件数
- 土砂災害の発生件数(国交省の集計)
- 電力レジリエンスに関する国の審議会での倒木対策・無電柱化の議論
前提条件
- 台風や豪雨による停電は、今後も毎年のように発生する。
- 一般送配電事業者と自治体の倒木対策・事前伐採は、災害時連携計画に沿って継続されるが、地域による進み具合の差は残る。
- 配電設備の地中化などの大規模な改修は、5年程度では一部地域にとどまる。
不確実性(見通しが変わる条件)
気象条件によって被害の規模と復旧期間は大きく変わります。今回の停電の最終的な復旧日や、長期化した地域の正確な範囲は、本稿執筆時点で原典により確認できていません。また、事前伐採や配電網の強化がどこまで進むかは、自治体の予算や土地所有者の同意に左右されます。
明日の経営会議で問うべき3つのこと
- 当社の工場・倉庫・店舗のうち、進入路が限られる、周囲に樹木が多いなど、停電が長引きやすい拠点はどこか。
- 長期停電を想定する拠点で、非常用電源は何時間動き、燃料はどう補給する計画か。
- 通電再開時の事故を防ぐ手順と、敷地内の電気設備を点検してもらう業者との連絡体制は決まっているか。
本記事は情報提供を目的としたもので、投資・法務・税務等の個別の助言ではありません。将来の見通しは執筆時点の情報と前提に基づく分析であり、結果を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、専門家にご相談ください。
根拠資料・出典
一次資料
- 一次資料令和8年台風25号による東京電力パワーグリッド株式会社 サービスエリア内の停電状況、復旧見通しおよび設備被害状況等について【9月23日17時時点】
- 一次資料倒木による停電予防のための樹木の事前伐採に関する調査 結果報告書
- 一次資料物流拠点機能強化支援事業費補助金(非常用電源設備の導入補助事業及び災害時の支援物資輸送体制構築促進事業)の二次公募開始
二次報道・参考
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月19日 12:00
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