英競争当局、iPhoneの非接触機能「NFC」の開放をアップルに求める案 決済・本人確認・デジタル鍵で他社の参入を後押し
新しいデジタル市場法に基づく「行為要件」案。意見募集は11月17日まで
英国の競争・市場庁(CMA)は10月20日、iPhoneの非接触通信機能(NFC)を、他社のアプリにも公正な条件で開放するようアップルに求める案を公表しました。決済やデジタル身分証、車やホテルの鍵などで競争を促す狙いで、手数料も現在より大幅に下がると見込んでいます。11月17日まで意見を募集します。
まず、これだけ押さえたい
- 英CMAは10月20日、iPhoneのNFCを他社に公正な条件で開放するようアップルに求める案を公表しました。
- 2つの国際方式(SEとHCE)での提供を求め、手数料は現在より大幅に下がると見込んでいます。
- 意見募集は11月17日までで、決済、デジタル身分証、デジタル鍵などでの競争促進を狙っています。
押さえておきたい数字
意見募集の締め切り
2026年11月17日
10月20日に公表
基準時点: 2026年10月20日
英国の非接触決済の比率
全決済の39%
10年前は3%
基準時点: 2025年
経営への示唆編集部の分析
スマホのNFCは、決済だけでなく本人確認、入退室、チケットなど多くの業務の入り口になっています。英国の案が最終決定されれば、EUに続き、アップルの端末で他社が独自のウォレットや認証サービスを提供しやすくなる可能性があります。英国や欧州で決済・会員・鍵などのサービスを展開する日本企業にとっては、国ごとに異なる技術方式や手数料の条件を踏まえて開発計画を立てる必要があります。国内でも同様のサービスを検討する企業は、海外の規制の動きが端末メーカーの条件を変え得る点を押さえておくとよいでしょう。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
英国の競争・市場庁(CMA)は2026年10月20日、iPhoneのNFC(近距離無線通信。スマホをかざして決済や認証をする技術)を他社にも使えるようにする「行為要件」の案を公表し、意見募集を始めました(CMA 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
何を求めているのか
アップルに、国際的に使われている2つの方式でNFCを開放するよう求める内容です。 対象は、端末内の専用チップを使う「セキュアエレメント(SE)」方式と、アプリ側で処理する「ホストカードエミュレーション(HCE)」方式です。CMAによると、アップルは英国で現在SE方式しか提供していません。CMAが確認した証拠では、どちらの方式にも本質的な安全上の問題は見られないとしています(CMA 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
案では、開発者が「公正、合理的、透明で差別のない条件」でNFCを使えるようにすることを求めています(CMA 意見募集(外部サイトが新しいタブで開きます))。CMAは料金や条件そのものは決めず、決め方の原則を示しました。手数料はアップルに適正な対価を残しつつ、現在より大幅に下がると見込んでいます(CMA 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
なぜ今なのか
CMAは2025年10月22日に、アップルのモバイル基盤を、2024年制定のデジタル市場・競争・消費者法に基づく**戦略的市場地位(SMS)**に指定しました。今回の案は、指定に基づいて個別の行動を求める「行為要件」の一つです。2026年6月30日にはNFCに関する情報提供の呼びかけと、アプリ外の安い購入手段への誘導(ステアリング)に関する行為要件案の意見募集を行っています(CMA 事件ページ(外部サイトが新しいタブで開きます))。
事業者からは、現在の条件では事業が成り立たない可能性や、国・地域ごとに技術的な方式が違うため規模を広げにくいといった声が寄せられていました。CMAは、EUではアップルが決済向けのNFC開放に同意してから半年後に代替の決済アプリが登場し、複数社が続いた一方、英国ではまだ同種の競合製品が出ていないと指摘しています(CMA 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
想定される使い道と今後
CMAは、デジタルウォレットや決済のほか、デジタル身分証・年齢確認、車・ホテル・職場のデジタル鍵、チケットや交通パス、ポイントサービスを挙げています。英国では非接触決済が全決済の39%を占め、成人の6割超がデジタルウォレットを使っているとしています(CMA 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
意見募集は2026年11月17日午後11時59分(英国時間)まで続き、CMAは回答を検討したうえで最終決定します(CMA 意見募集(外部サイトが新しいタブで開きます))。
企業にとっての意味
スマホの「かざす」機能は、決済だけでなく本人確認や鍵など多くの業務の入り口になりつつあります。どの国で、どの方式が、どんな条件で使えるかは、こうしたサービスを展開する企業の事業計画を左右します。
経営会議で確認したい3つのこと
- 当社のサービス(決済・会員証・入退室・チケットなど)で、スマホのNFCを使う計画はあるか。
- 英国・EUなど国ごとに異なるNFCの利用条件や手数料を、事業計画に織り込んでいるか。
- 端末メーカーの条件変更を前提にした、技術方式の選択(SEかHCEか)を検討しているか。
用語の補足(5語)
- NFC
- 近距離無線通信。数センチの距離でスマホやカードをかざして通信する技術で、非接触決済、交通系ICカード、入退室などに使われる。
- 戦略的市場地位(SMS)
- 英国のデジタル市場・競争・消費者法(2024年)に基づき、CMAが特に強い市場支配力を持つと認めた企業に与える指定。指定された企業には個別の行為要件を課すことができる。
- 行為要件
- SMSに指定された企業に対し、CMAが求める具体的な行動のルール。公正な取引や利用者の選択肢の確保などを目的とする。
- セキュアエレメント(SE)とHCE
- スマホでNFCを使う2つの方式。SEは端末内の専用の安全なチップに情報を保管する方式、HCEはアプリやクラウド側で処理する方式。
- ステアリング
- アプリの開発者が、アプリストアの外にある安い購入手段や自社サイトに利用者を案内すること。
根拠資料・出典
一次資料
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年11月1日 12:00
誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。