イスラエルの連立交渉はどこへ向かうか 組閣の日程、4つのシナリオ、再選挙の可能性と日本企業への意味
53・48・19議席で過半数に届かず。正式結果は11月4日までに公表予定で、組閣の期限は法律で決まっている
10月27日のイスラエル総選挙は開票を終え、議席は報道の集計で53・48・19と、どの陣営も過半数の61に届きません。正式結果は11月4日までに公表予定で、交渉は長引く可能性があります。日本企業は勝敗の予想より、連立合意の中身と再選挙への備えを確認することが大切です。
まず、これだけ押さえたい
- 報道の集計で53・48・19議席となり、どの陣営も過半数の61議席に届いていません。最終結果は11月4日までに公表される予定で、それまでは変わる可能性があります。
- 担当者の指名、28日と最大14日の期限など日程の大枠は法律で決まっています。期限を使い切れば、再選挙は2027年春から初夏ごろになると編集部は試算します。
- 日本企業は勝敗の予想より、指名、連立合意、予算の3つを節目に、エネルギー、輸送、テック企業との取引の判断を分けておくことが現実的です。
押さえておきたい数字
各陣営の議席(報道の集計)
53・48・19議席
ネタニヤフ首相の陣営・野党陣営・アラブ系。過半数は61議席
基準時点: 2026年10月30日の開票結果
最終結果の官報での公表
2026年11月4日まで
それまでは結果が変わる可能性がある
基準時点: 2026年10月30日時点
組閣の最初の期限
28日+最大14日
担当者の指名から。指名は結果の公表から7日以内
基準時点: 基本法「政府」の英訳による
経営への示唆編集部の分析
今回の選挙結果から、次の政権の形はまだ読めません。原油や海上輸送のリスクはイランや湾岸の情勢に大きく左右されるため、組閣の行方だけで調達計画を変える必要はないと編集部は考えます。一方、イスラエル企業との取引や投資では、政権の空白が数か月から1年近く続くことも想定し、拠点、人員、決済、契約条件を確認しておく価値があります。連立合意の内容が判明する時点を見直しの節目と決めておけば、報道のたびに判断を揺らさずに済みます。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
いま確定していることと、していないこと
開票は終わりましたが、結果はまだ正式なものではありません。 中央選挙委員会の開票ページ(外部サイトが新しいタブで開きます)によると、最終結果は11月4日までに官報で公表され、それまでは変わる可能性があります。
委員会のページに議席の表示はなく、議席は報道によるものです。Times of Israel(外部サイトが新しいタブで開きます)は、次のように伝えています。
| 陣営 | 議席 | 内訳 |
|---|---|---|
| ネタニヤフ首相の陣営 | 53 | リクード27、オツマ・イェフディト7、統一トーラー・ユダヤ教7、シャス6、宗教シオニズム6 |
| アイゼンコット氏らの野党陣営 | 48 | ヤシャル21、ベヤハド12、民主党8、イスラエル我が家7 |
| アラブ系政党 | 19 | ジョイント・リスト11、ラアム8 |
今後の日程はどうなるのか
日程の大枠は法律で決まっています。 次の表は、報道と基本法「政府」の英訳(外部サイトが新しいタブで開きます)によるものです。日付のうち「試算」は編集部の計算で、公式の発表ではありません。
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 11月4日まで | 最終結果を官報で公表。大統領へ提出 |
| 11月10日 | 新しい国会の宣誓の予定(外部サイトが新しいタブで開きます) |
| 公表から7日以内(試算: 11月11日ごろまで) | 大統領が各党と協議し、組閣を担当する議員を指名 |
| 指名から28日、最大14日の延長(試算: 12月下旬まで) | 1人目の担当者が組閣を試みる |
| その後 | 大統領が別の議員を指名(28日)するか、組閣の見込みがないと国会議長に通知 |
| さらにその後 | 国会議員の過半数が21日以内に担当者を求めれば、その議員が14日間で組閣を試みる |
| 不成立の場合 | 国会は解散したとみなされ、90日後までの直近の火曜日に再選挙 |
期限を使い切る場合、再選挙は2027年4月から6月ごろになると編集部は試算します。 担当者が早く断念すれば日程は早まります。なお、カナダ紙Globe and Mail(外部サイトが新しいタブで開きます)は、組閣が繰り返し失敗すれば「来年早々」に再選挙と書いており、この試算より早い表現です。
組閣後にも関門があります。イスラエル民主主義研究所(IDI)(外部サイトが新しいタブで開きます)によると、予算が3月末、または新政権の発足から145日以内に成立しなければ、国会は自動的に解散します。12月に政権が発足すれば、2027年の春から初夏が最初の試練になるとみられます。
なぜ61議席に届きにくいのか
議席の計算上は複数の組み合わせがありますが、それぞれに各党の公約や立場という制約があります。 議席の足し算は編集部によるものです。
- アイゼンコット氏の陣営とアラブ系: 合わせて67議席です。ただ、アイゼンコット氏はアラブ系政党との政権を否定し、ラアムは参加に前向き、ジョイント・リストは閣外からの支持に含みを残しています(ロイター/Korea Times(外部サイトが新しいタブで開きます))。イスラエル我が家のリーベルマン党首はアラブ系、超正統派の政党と組まないとしており(Ynet(外部サイトが新しいタブで開きます))、同党7議席が抜ければ60議席です。
- アイゼンコット氏の陣営と超正統派: シャスと統一トーラー・ユダヤ教の13議席を足すとちょうど61議席です。超正統派は交渉の意向を示しましたが、兵役免除の法律を求めており、陣営内の公約と対立します(Ynet(外部サイトが新しいタブで開きます))。
- ネタニヤフ氏とアイゼンコット氏の大連立: 両陣営で可能性が議論され始めたと報じられています(Ynet(外部サイトが新しいタブで開きます))。ただ、野党陣営にとっては選挙での公約を翻すことになります(Globe and Mail(外部サイトが新しいタブで開きます))。
誰が先に指名されるかも確定していません。Ynet(外部サイトが新しいタブで開きます)は、両陣営の政治関係者がアイゼンコット氏の先行を予想していると伝えています。同じ記事によると、ヘルツォグ大統領は再選挙を防ぐために力を尽くすと繰り返し述べています。
組閣の前に、国会議長の選出が最初の力比べになる可能性もあります。野党陣営とアラブ系が組めば議長を選び、組閣の前に立法を進める余地があると報じられています(外部サイトが新しいタブで開きます)。
日本企業にとって何が変わるのか
影響が届く経路は当サイトの投票前の分析で整理しました。ここでは、組閣の行方によって判断がどう変わるかを考えます。
エネルギー・海上輸送: 組閣の行方だけでは決まらない
編集部は、日本の原油輸送を左右するのは組閣そのものより、イランや湾岸の情勢だと考えます。 日本は2025年に原油輸入の94%を中東に頼り、その93%がホルムズ海峡を通っていました(ロイター/The Star(外部サイトが新しいタブで開きます))。IEA(外部サイトが新しいタブで開きます)は10月の報告で、湾岸での攻撃の再発により供給の回復は脆弱だと指摘しました。確認すべきなのは、新政権の対イラン方針と米国との関係です。政権の空白が長引く間も、安全保障上の判断は続く点に注意が必要です。
イスラエルのテック企業との取引: 金額は小さくても部品は重要
日本からの投資と輸入には、半導体などの重要な取引が含まれます。 ジェトロの年報(外部サイトが新しいタブで開きます)によると、2025年の日本の輸入は16億7,223万ドルで、半導体等電子部品が29.7%を占めました。日本からの投資は33件、5億5,100万ドル(民間調査)で、進出拠点は87です。
取引の判断では、政権の形より実務の確認が先です。開発や生産の拠点がどこにあるか、予備役の招集時に業務を続けられるか、決済や輸出管理の条件はどうかを点検します。
地政学リスク管理: 予想ではなく、判断の節目を決める
社内の見直しの節目は、指名、連立合意、予算の3つが現実的です。 連立合意の内容によっては、英仏加が9月に表明した(外部サイトが新しいタブで開きます)入植地をめぐる措置のような対外関係の問題も、取引に影響し得ます。
渡航の判断は別に確認します。外務省の危険情報(外部サイトが新しいタブで開きます)は9月10日時点で、大部分の地域がレベル2、ヨルダン川西岸の大部分がレベル3、ガザ周辺とレバノン国境地帯がレベル4です。最新の情報は外務省のページで確認してください。
誰が首相になるかを当てる必要はありません
日本企業に必要なのは、再選挙で空白が2027年まで続く場合も含めて、判断を分けておくことです。
今後どうなるか
以下は事実ではなく、報道と法律の手続きをもとにした編集部の見通しです。特定の政治家や政党を評価するものではなく、確率も示しません。順番は起こりやすさの順ではありません。
A:ネタニヤフ氏の陣営を中心とする政権 あと8議席を、他党の取り込みや合意で確保する展開です。対イランや入植地の政策は現状の延長になりやすいとみられます。現時点では、8議席の確保先ははっきりしません。
B:大連立 ネタニヤフ氏とアイゼンコット氏の陣営が組む展開です。対外的な安定を示しやすい一方、両者の立場の違いが大きく、政策は妥協の産物になりやすいと考えられます。実現には、これまでの公約の変更が必要です。
C:アイゼンコット氏の陣営を中心とする政権 超正統派の参加か、アラブ系の参加や閣外支持が必要になる展開です。徴兵やアラブ系の地域政策などが連立の条件になり、政権の基盤は不安定になる可能性があります。
D:組閣できず再選挙 手続きの期限を使えば、2027年春から初夏ごろの投票が考えられます。その間は暫定的な体制が続き、予算や長期の政策は進みにくくなります。再選挙でも膠着が解けるとは限りません。
どの政権ができても、2028年までの安定が保証されるわけではありません。ラアムが参加した2021年の政権は18か月で崩壊しました。A〜Cのいずれでも、発足後に予算の成立や徴兵問題で再び不安定になる可能性があります。
シナリオの比較
確定した事実ではなく、執筆時点の情報にもとづいて想定したシナリオです。
| シナリオ | 成立条件 | 想定される影響 | 企業の対応 |
|---|---|---|---|
| A:ネタニヤフ氏の陣営を中心とする政権 | 他党の取り込みや合意で、53議席にあと8議席を確保する。現時点で確保先ははっきりしない。 | 対イランや入植地の政策は現状の延長になりやすいとみられる。欧州などとの対外関係の議論が続く場合、制裁や取引規制の点検が重要になる。 | 連立合意の入植地、対イラン、徴兵の項目を確認する。取引先と決済経路の制裁確認を定例化する。輸送の代替ルートと費用を維持する。 |
| B:大連立 | 両陣営が公約を変更し、首相の交代制などで合意する。超正統派の扱いや首相の座が焦点になる。 | 対外的には安定を示しやすいが、政策は妥協になりやすい。基本方針の対立が残れば、発足後に予算や徴兵で不安定になる可能性がある。 | 発足だけで安心せず、政策の合意と予算の成立を見て判断する。投資や提携は段階を分け、節目ごとに条件を確認する。 |
| C:アイゼンコット氏の陣営を中心とする政権 | 超正統派の参加、またはアラブ系の参加や閣外支持を得る。方針の変更や、イスラエル我が家の立場の調整が必要になる。 | 徴兵、司法、アラブ系の地域政策が交渉の条件になる。対パレスチナや入植地の扱いには変化の余地があるが、基盤が不安定なら政策は進みにくい可能性がある。 | 政権の交代で対外関係のリスクが自動的に下がるとみなさない。連立合意と閣僚の担当を確認し、中東事業の計画への影響を見直す。 |
| D:組閣できず再選挙 | 期限内に誰も61議席をまとめられず、国会が解散とみなされる。担当者の断念が早いほど投票日は早まる。 | 暫定的な体制が続き、予算や長期の制度改革は進みにくい。安全保障の判断は続くため、中東のリスクが止まるわけではない。再選挙後も膠着する可能性がある。 | 許認可や大型の契約に、政権の空白を織り込んだ日程を置く。投資判断は再選挙後に先送りできるものと、進めるものを分ける。 |
予測対象期間
2027年1月〜2028年6月
変化を見極める指標
- 11月4日までの最終結果の公表と、議席の変更の有無
- 11月10日の国会の宣誓と、国会議長の選出
- 大統領の協議で各党が推薦する候補と、最初の担当者の指名
- 連立合意の内容(入植地、対イラン方針、徴兵、司法など)
- 2027年予算の成立の動きと、イスラエル銀行の見通し
- ホルムズ海峡周辺の船舶への攻撃、湾岸の原油輸出、外務省の危険情報の変更
前提条件
- 11月4日までの最終結果で、議席の大枠が変わらない。1議席の変化でも連立の計算は変わり得る。
- 組閣の手続きは基本法の現行規定に従う。今回確認した英訳は2001年版の掲載で、現行の条文は要確認。
- 国会が解散法を可決すれば組閣の手続きは止まる(基本法第12条)。この経路は日程の試算に含めていない。
- イラン、ガザ、レバノンをめぐる情勢に大きな急変がない。急変があれば、連立の組み合わせも日本企業への影響も変わる。
不確実性(見通しが変わる条件)
議席は報道の集計で、最終結果は11月4日まで変わる可能性があります。外国の干渉の疑いをめぐる公安機関の調査も続いています。委員会の幹部は最終結果に影響しないと説明しています。各党の立場は交渉の中で変わり得るため、シナリオは現時点の公の発言と報道に基づくものです。再選挙の時期は編集部の試算で、公式の日程ではありません。匿名の情報源に基づく報道も含まれます。
経営会議で確認したい3つのこと
- 指名、連立合意、予算成立の各時点で、誰が情報を更新し、どの計画を見直すかを決めているか。連立合意のどの政策(入植地、対イラン方針、徴兵など)が出たら、取引や制裁対応を点検するか。
- イスラエル企業との取引で、開発・生産拠点の所在、予備役招集時の業務継続、代替手段を確認しているか。投資や提携の判断は、再選挙で2027年半ばまで政権が定まらない場合でも進められるか。
- ホルムズ海峡や紅海の輸送に支障が出た場合の代替ルート、追加費用、在庫日数を把握しているか。
本記事は情報提供を目的としたもので、投資・法務・税務等の個別の助言ではありません。将来の見通しは執筆時点の情報と前提に基づく分析であり、結果を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、専門家にご相談ください。
用語の補足(6語)
- クネセト
- イスラエルの一院制の国会。定数は120で、過半数は61議席。
- 基本法
- イスラエルの憲法に近い位置づけの法律。組閣の手続きや国会の解散を定めている。
- 閣外からの支持
- 政権に大臣を出さず、国会の採決などで政権を支える形。
- 超正統派
- ユダヤ教の戒律を厳格に守る人々。シャスと統一トーラー・ユダヤ教が主な政党で、兵役免除が大きな政治課題になっている。
- 官報での公表
- 政府の公式の刊行物に載せること。イスラエルでは最終結果の確定の手続きにあたる。
- 危険情報
- 外務省が地域ごとに示す渡航の安全に関する目安。レベル1から4まである。
根拠資料・出典
一次情報に関する注記: 中央選挙委員会の開票ページ(votes26.bechirot.gov.il)はブラウザーで確認できましたが、得票のみで議席数は表示されていません。議席数は報道の集計によります。基本法「政府」は公式サイトの現行版を確認できず、Jewish Virtual Libraryに掲載された英訳によります。大統領府の公式の日程は確認できていません。
一次資料
- 一次資料第26期クネセト選挙の開票結果(全国)
- 一次資料Oil Market Report - October 2026
- 一次資料イスラエルの貿易投資年報
- 一次資料Joint statement by the Prime Minister, President Macron and Prime Minister Carney on the Two-State Solution
- 一次資料イスラエル、パレスチナの危険情報【一部地域の危険情報のレベル引き下げ】
二次報道・参考
- 二次報道With all votes counted, Netanyahu's bloc at 53 seats, Eisenkot's 48, Arab parties 19
- 二次報道Basic Laws of Israel: The Government
- 二次報道Israel's final election results give neither Netanyahu nor the opposition a majority
- 二次報道Israel's State Budget is Directly Linked to Dissolution of Knesset and Elections
- 二次報道For Israel's Arabs, record turnout may bring political clout
- 二次報道Eisenkot faces coalition trap as Netanyahu keeps unity question open
- 二次報道Japan approves three bills to ease oil import costs
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年11月1日 00:09
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