政府が対ロシア追加制裁 33団体・9個人を資産凍結、特定船舶35隻へのサービスを許可制に 輸出禁止品目も10月16日から拡大
トルコ・UAEの4団体を輸出禁止先に追加、既存契約の履行は11月1日まで猶予
政府は2026年10月2日、ウクライナ情勢を受けた外為法に基づく対ロシア追加措置を決めました。ロシアの33団体・9個人の資産凍結、第三国の4団体への輸出禁止、特定の船舶35隻へのサービス提供の許可制に加え、ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止対象を広げ、10月16日に施行しました。輸出管理や海運・保険・金融の実務で確認すべき点をまとめます。
まず、これだけ押さえたい
- 政府は2026年10月2日、外為法に基づく対ロシア追加措置を閣議了解し、即日適用した。
- ロシアの33団体・9個人を資産凍結の対象とし、トルコ1・UAE3の計4団体への輸出等を禁止した。
- 特定の船舶35隻への海運・修繕・保険・金融などのサービス提供を許可制にした。既存契約の履行は11月1日まで猶予。
- ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止対象を拡大し、10月16日に施行した。鉱石・化学品・金属・機械・測定機器など。
- 取引先と船舶(IMO番号)の照合、自社品の該否判定の見直しが実務上の課題。
経営への示唆編集部の分析
今回の措置は、ロシア本国の企業だけでなく第三国の仲介企業や、原油を運ぶ船舶そのものに対象を広げている点が特徴です。輸出企業にとっては品目の該否判定と仕向け先の確認、海運・保険・金融の企業にとっては船舶単位の照合が求められます。制裁は主要国と歩調を合わせて段階的に追加されるため、告示の更新を定期的に取引先データと突き合わせる仕組みを持つことが、違反リスクを下げる基本になります。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
10月2日に閣議了解、三省が発表
外務省・財務省・経済産業省は2026年10月2日、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」に基づき、外為法(外国為替及び外国貿易法。海外との送金・取引・輸出を規制する法律)による追加措置を実施すると発表しました。「主要国が講ずることとした措置の内容を踏まえ」たものと説明しています(外務省(外部サイトが新しいタブで開きます))。
措置の内容
- 資産凍結等:ロシアの33団体・9個人を対象に、支払いと資本取引(預金・信託・貸付の契約)を許可制にします。
- 第三国の団体への輸出禁止:ロシア・ベラルーシ以外の4団体への輸出等を禁止します。外務省の別添資料によると、所在地はトルコが1団体、アラブ首長国連邦(UAE)が3団体です(外務省 別添2(外部サイトが新しいタブで開きます))。
- 特定の船舶への規制:35隻を対象に、財務省告示で定めるサービスの提供と、売買に伴う貸付・債務保証を許可制にします。
適用は10月2日からで、同日より前に結んだ契約に基づく履行のうち11月1日より前に行うものは対象外です(財務省(外部サイトが新しいタブで開きます))。
「影の船団」への対応
関係省庁が公表したQ&Aによると、日本は米国・EUなどとともに、一定価格を超えるロシア産原油・石油製品の海上輸送に関わるサービスを許可制にしてきました。一方でロシアは**「影の船団」(制裁を逃れて原油を運ぶ、所有関係が不透明なタンカー群)を使って収入を得ていると報告されており、主要国の措置を踏まえて今回の船舶規制を導入したと説明しています。規制対象のサービスは、海運、船員の紹介・派遣、水先、修繕、船舶保険・船主責任保険とその再保険、与信などの金融サービスです。対象船舶はIMO番号**(船ごとに固有の国際識別番号)で告示されます(Q&A(外部サイトが新しいタブで開きます))。
輸出禁止品目の拡大
経産省は10月6日、ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止を広げる政令改正を閣議決定したと発表しました。10月9日公布、10月16日施行です。追加対象には、クロム鉱・モリブデン鉱などの鉱石、ベンゼン・トルエンなどの化学品、二酸化チタン系顔料、プラスチックの棒・形材、粗銅、アルミニウムの塊・くず、タングステン製品、工具、ガスタービン、温度計などの測定機器が例示されています(HS分類25〜90類の一部)(経済産業省(外部サイトが新しいタブで開きます))。
企業が確認すべきこと
- 取引先の照合:資産凍結対象や輸出禁止先の団体が、自社や代理店の取引先・仕向け先に含まれていないか、最新の告示で確認します。第三国の団体が対象になっている点に注意が必要です。
- 品目の該否判定:化学品・素材・機械部品などを扱う企業は、自社品がHS番号ベースで新たな禁止対象に当たるか、省令・告示で確認します。経産省は、該否の確認には貿易管理のページに掲載された法令を必ず確認するよう求めています。
- 海運・保険・金融:船舶の運航、修繕、保険、融資に関わる企業は、取引相手の船舶のIMO番号を告示と照らし合わせる手順を整える必要があります。既存契約の猶予は11月1日までです。
経営会議で確認したい3つのこと
- 当社の取引先・代理店・仕向け先に、今回告示された団体(第三国の4団体を含む)が含まれていないことを確認したか。
- 10月16日施行の輸出禁止品目の拡大について、当社製品の該否判定を更新したか。
- 船舶に関わる取引で、IMO番号を制裁告示と照合する手順が社内で整っているか。
用語の補足(12語)
- 外為法
- 外国為替及び外国貿易法の略称。海外との送金や資本取引、貨物・技術の輸出入を管理する法律で、経済制裁の法的根拠にもなる。
- 閣議了解
- 各省庁の所管事項のうち、政府全体で了承しておくべき事柄について、閣議で全閣僚の合意を得ること。
- 資産凍結
- 制裁の対象となった個人や団体について、預金の引き出しや送金、資産の移転などを禁止または許可制にし、自由に使えなくする措置。
- 資本取引
- 預金や信託、貸付、証券の取得など、資金や資産のやり取りを伴う取引。外為法では、制裁の際に許可制の対象となりうる。
- 影の船団
- 制裁を逃れてロシア産原油などを運ぶとされる、所有関係や保険が不透明なタンカー群を指す呼び名。
- IMO番号
- 国際海事機関(IMO)の仕組みに基づき、船ごとに割り当てられる固有の識別番号。船名や船籍が変わっても番号は変わらない。
- 水先
- 港や狭い水路で、その海域に詳しい資格者(水先人)が船に乗り込み、船を安全に導く業務。
- 船主責任保険
- 船の運航に伴って船主が負う賠償責任(油濁や衝突、乗組員の事故など)を補償する保険。P&I保険とも呼ばれる。
- 再保険
- 保険会社が引き受けた保険の責任の一部を、別の保険会社に引き受けてもらう仕組み。保険会社のための保険。
- 与信
- 取引相手に貸付や支払いの猶予などの信用を与えること。融資や債務保証、後払いの取引などが含まれる。
- HS分類
- 国際的に統一された貿易品の分類方法。品目ごとに番号が付けられ、関税や輸出入規制の対象品目を特定する際に使われる。
- 該否判定
- 輸出しようとする貨物や技術が、法令で規制される品目に当たるかどうかを確認すること。
根拠資料・出典
一次資料
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月23日 08:00
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