Grokに米イリノイ州で集団訴訟、顔写真から生体情報を取得したと主張 生体情報保護法BIPAの要点
米イリノイ州で2026年10月、対話型AI「Grok」が利用者の顔写真から顔の形状データを同意なく取得したとして、同州の生体情報プライバシー法(BIPA)違反を主張する集団訴訟が起こされました。原告側の主張の段階です。訴えの内容と、書面同意や保存方針、法定の損害賠償額などBIPAの要点、日本企業への示唆を解説します。
まず、これだけ押さえたい
- 2026年10月7日、Grokが顔写真から顔の形状データを同意なく取得したとして、BIPA違反を主張する集団訴訟がイリノイ州の連邦地裁に起こされました。原告側の主張の段階です。
- BIPAは顔の形状のスキャンなどを対象に、事前の書面通知と署名入りの書面同意、保存・破棄方針の公開などを企業に求めています。
- 違反には1件1,000ドル(過失)または5,000ドル(故意・重大な不注意)の損害賠償が定められ、個人が直接訴えられます。
- 2024年の改正で、同じ人から同じ方法で繰り返し収集しても違反は1回と数えることになりました。
- 画像生成AIの顔の処理が「顔の形状のスキャン」にあたるかが争点になるとみられます。
経営への示唆編集部の分析
顔写真を受け取って加工・生成するAIサービスは、利用者から見れば単なる画像編集でも、内部で顔の特徴を読み取っていれば生体情報の収集とみなされる可能性があります。BIPAは個人が直接訴えられ、1件あたりの賠償額も定められているため、集団訴訟になると金額が大きくなりやすい法律です。米国で顔写真や音声を扱うサービスを提供・導入する日本企業は、委託先のAIを含めて処理の中身を確認し、事前の書面同意と保存・破棄の方針を整えておくことが重要です。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
米イリノイ州で、対話型AI「Grok」が利用者の顔写真から生体情報を取得したとして、同州のBIPA(生体情報プライバシー法)違反を主張する集団訴訟が起こされました。集団訴訟とは、同じ被害を受けたとする多数の人を代表して少数の原告が起こす訴訟です。いずれも原告側の主張で、裁判所の判断はまだ出ていません。
訴えの内容
報道によると、イリノイ州のGrok利用者が2026年10月7日、イリノイ州北部地区連邦地裁に集団訴訟を起こしました。原告は自撮り写真をアップロードしてビジネス用の顔写真などの作成を頼んだところ、Grokが顔の位置を特定し、目・鼻・口・あごなどの位置関係から顔の形状データを取り出したと主張しています。こうした収集に同意しておらず、知らされてもいなかったとして、損害賠償、イリノイ州民の生体情報の収集差し止め、収集済みデータの破棄を求めています(MediaPost(外部サイトが新しいタブで開きます))。10月12日にも同様の集団訴訟が起こされたと報じられています(Cryptopolitan(外部サイトが新しいタブで開きます))。
被告名は報道では「SpaceXAI」とされています。GrokはxAIが開発したAIで、xAIは2026年2月にSpaceXに買収され、7月にSpaceXAIへ名称を変えたと報じられています(Free Press Journal(外部サイトが新しいタブで開きます))。会社側のコメントは確認できていません。
BIPAとは
BIPAは2008年に制定されたイリノイ州法です。対象となる「生体識別子」には、網膜・虹彩のスキャン、指紋、声紋、手や顔の形状のスキャンが含まれます(イリノイ州控訴裁判所の判決(外部サイトが新しいタブで開きます))。企業が守るべき主な義務は次のとおりです(連邦地裁の決定(外部サイトが新しいタブで開きます))。
- 収集する前に、収集すること、目的、保存・利用期間を書面で知らせ、本人から署名入りの書面による同意(written release)を得る
- 生体情報の保存期間と、恒久的に破棄するための方針を公開する
- 生体情報の販売や、同意のない第三者への開示を行わない
違反があれば個人が直接訴えることができ、過失による違反は1件1,000ドル、故意または重大な不注意による違反は1件5,000ドル(実損がこれを上回れば実損)を請求できます。2024年の法改正で、同じ人から同じ方法で繰り返し収集しても違反は1回と数えることになり、連邦控訴裁判所は2026年4月、この改正が改正前に起こされた訴訟にも適用されると判断しました(第7巡回区控訴裁判所の判決(外部サイトが新しいタブで開きます))。
日本企業への示唆
画像生成や写真加工のAIが、写真から顔の特徴を読み取る処理をしている場合、それがBIPAの「顔の形状のスキャン」にあたるかが今回の争点になるとみられます。米国の利用者に顔写真を扱うサービスを提供する企業は、処理の中身を把握し、同意の取り方や保存・破棄の方針を見直しておくことが求められます。
経営会議で確認したい3つのこと
- 当社のサービスや利用しているAIが、顔写真や音声から本人を識別しうる特徴を取り出していないか把握しているか。
- 米国、特にイリノイ州の利用者から生体情報を扱う場合の書面同意と保存・破棄方針を用意しているか。
- 外部のAIサービスを組み込む際、契約で生体情報の扱いと責任分担を確認しているか。
用語の補足(6語)
- BIPA
- Biometric Information Privacy Actの略。米イリノイ州の生体情報プライバシー法で、指紋や顔の形状などの収集に事前の通知と書面同意を求める。
- 集団訴訟
- 同じ被害を受けたとする多数の人を代表して、少数の原告が全体のために起こす訴訟。米国ではクラスアクションと呼ばれる。
- Grok
- 米xAI社が開発した対話型AI。文章での対話のほか、画像の生成や加工などの機能を持つ。
- 生体識別子
- 指紋、声紋、網膜・虹彩、顔の形状など、身体的な特徴から個人を識別できる情報のこと。
- 連邦地裁
- 連邦地方裁判所の略。米国の連邦裁判所のうち第一審を担う裁判所で、全米が複数の地区に分かれている。
- 第7巡回区控訴裁判所
- 米国の連邦控訴裁判所の一つ。イリノイ州などを管轄し、連邦地裁の判決に対する控訴を審理する。
根拠資料・出典
一次情報に関する注記: Grok訴訟の訴状・裁判所の記録は開けず、訴えの内容は報道(MediaPost、Cryptopolitan)に基づく。BIPAの条文ページ(ilga.gov)は接続できなかったため、条文の内容は条文を引用する裁判所の判決・決定(イリノイ州控訴裁判所、連邦地裁、第7巡回区控訴裁判所)で確認した。
一次資料
- 一次資料Liu v. Four Seasons Hotel, Ltd., 2019 IL App (1st) 182645
- 一次資料Jones v. Microsoft Corp., No. 22-cv-3437, Memorandum Opinion and Order
- 一次資料Clay v. Union Pacific Railroad Co., No. 25-2185 (7th Cir. Apr. 1, 2026)
二次報道・参考
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月21日 15:30
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