「経営コンサルタント」倒産は上半期80件、過去2番目の水準 AIで変わる外部専門家とAIベンダーへの頼り方
東京商工リサーチによると、2026年度上半期(4〜9月)の「経営コンサルタント」の倒産は80件で、上半期として過去2番目の水準でした。同社は生成AIで資料作成や分析が代替できるようになったと指摘します。一方、米ガートナーはベンダーの技術者が作り込んだAIエージェントの多くが放棄されると予測しました。外部の専門家やAIベンダーとの付き合い方を分析します。
まず、これだけ押さえたい
- 2026年度上半期の経営コンサルタントの倒産は80件で、上半期として過去2番目の水準でした。
- 東京商工リサーチは、生成AIで資料作成や分析が代替可能になり、深い専門性や成果への関与が求められると分析しています。
- ガートナーは2028年までに企業の70%がベンダーのFDEで作られたAIエージェントを放棄すると予測しました。
- 外部への発注は「作業」から「成果」へ、AIエージェントでは出口計画と社内への引き継ぎを先に決めることが重要です。
経営への示唆編集部の分析
AIの普及で、外部の専門家やAIベンダーに何を頼み、何に対価を払うかを見直す時期に来ています。情報収集や資料作成は社内でAIを使い、外部には自社にない専門性と成果への責任を求める形が基本になります。特にAIエージェントを外部に作ってもらう場合は、導入後に社内で運用・改善できる体制と、契約終了時の移行計画を最初に決めておかないと、費用だけがかさむおそれがあります。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
何が起きたか
東京商工リサーチは2026年10月7日、2026年度上半期(4〜9月)の「経営コンサルタント業」の倒産をまとめました(東京商工リサーチ(外部サイトが新しいタブで開きます))。
- 倒産件数は80件(前年同期比13.9%減)。過去最多だった前年同期(93件)からは減ったものの、2007年度以降の上半期で2番目に多い水準
- 負債総額は37億7,600万円(同6.5%減)
- 原因は「販売不振」が48件(構成比60.0%)で最多
- 従業員5人未満が79件で、ほぼすべてが小規模事業者。一方、負債1億円以上は11件(同83.3%増)と増えた
同社は、生成AIの普及で単なる資料作成や分析はAIでも代替できるようになり、コンサルタントには深い専門性による差別化や、顧客の成果への関与が求められていると分析しています。
これとは別に、米調査会社ガートナーは2026年9月29日(米国時間)、2028年までに企業の70%が、ベンダーの「フォワード・デプロイド・エンジニアリング(FDE)」で作られたAIエージェントを放棄するとの予測を発表しました(ITmedia エンタープライズ(外部サイトが新しいタブで開きます))。FDEとは、ベンダーの技術者が顧客企業に入り込み、その企業の業務に合わせてシステムを設計・開発する方式です。解説記事によると、放棄の理由として費用の膨張と、自社で仕組みを発展させられないことが挙げられています(Uravation(外部サイトが新しいタブで開きます))。
なぜ起きたか
二つのデータは、別々の現象を示しているようで、共通点があります。どちらも「外部の専門家に頼る仕事のやり方」が、AIによって問い直されていることです。
コンサルタントの側では、調査・分析・資料作成といった、これまで報酬の根拠となってきた作業の多くを、生成AIで短時間に行えるようになりました。東京商工リサーチは、過去の人脈や経験に頼るコンサルタントには成長の限界があるとしています。また2026年1月の行政書士法改正で、資格のない者が報酬を得て官公庁への書類を作成・提出できなくなり、補助金申請の代行だけを掲げる事業者は生き残りが難しいとの見方も示しました。
AIベンダーの側では、AIエージェントを顧客ごとに作り込むサービスが広がっています。ガートナーは、FDEの成否は契約の組み立てで決まるとし、成果への責任、ビジネス成果に基づく報酬、顧客への深い組み込みを要件に挙げています(ITmedia エンタープライズの記事による)。作り込んだエージェントを顧客企業が自分で直せないまま費用だけが膨らむと、使われなくなるという指摘です。
何が変わるか
発注する企業の側から見ると、影響は二つあります。
一つは、外部専門家に払う対価の中身が変わることです。資料作成や一般的な分析は社内でAIを使って行えるようになり、外部に頼む価値は、業界の深い知見、実行の支援、成果への責任といった部分に絞られていきます。逆に、作業量に応じて料金を払う契約のままでは、費用に見合う価値を得にくくなります。
もう一つは、AIの仕組みを外部任せにするリスクです。ベンダーが作り込んだAIエージェントは、導入直後は動いても、業務の変化に合わせて直せる人が社内にいなければ、修正のたびに追加費用がかかります。ガートナーの予測は、こうした「作ってもらったが育てられない」状態が多くの企業で起きうることを示しています。
中小企業では、社内にAIに詳しい人材が少ないため外部への依存度が高く、この二つの影響を受けやすいと考えられます。
どう行動すべきか
外部の専門家やAIベンダーに頼る際は、次の点を見直すことが考えられます。
- 発注内容を「作業」から「成果」へ:資料の枚数や作業時間ではなく、売上・コスト・業務時間などの成果指標を契約に入れ、相手にも成果への責任を求めます。
- 社内でAIを使える部分は内製する:情報収集や資料の下書きは社内で生成AIを使い、外部には自社にない専門知見や実行支援を求めます。
- AIエージェントの発注では出口を先に決める:ガートナーの提言にならい、契約前に成果指標、知的財産の帰属、知識の引き継ぎ、契約終了時の移行計画を明記します。
- 社内に「直せる人」を育てる:ベンダーの技術者と社内担当者を組ませ、導入期間中に運用・改善のノウハウを移してもらいます。
- 支援者の資格と範囲を確認する:補助金申請などの支援を頼む場合、法律上その業務を行える資格があるかを確かめます。
今後どうなるか
以下は事実ではなく、公表データと予測を踏まえた見通しです。確率は示しません。
- 基本シナリオ:コンサルティング業界では、資料作成や一般的な分析を売りにする小規模事業者の淘汰が続き、業界特化の知見や実行支援を持つ事業者に需要が集まります。AIエージェントの外部開発では、成果連動の契約や引き継ぎを条件にする企業が増えます。
- 上振れシナリオ:企業側のAI活用力が高まり、外部専門家とは成果を共有する対等な関係が広がります。ベンダーが作り込んだ仕組みも社内で運用・改善できるようになり、AIへの投資が継続的な成果につながります。
- 下振れシナリオ:社内にAIを扱える人材が育たないまま外部への依存が続き、AIエージェントの改修費がかさんで利用が止まる例が増えます。投資の失敗が「AIは使えない」という社内の空気を生み、活用が後退します。
予測対象期間
2026年10月〜2029年12月
変化を見極める指標
- 東京商工リサーチの経営コンサルタント業の倒産件数(年度・上半期)
- 企業のAI関連の外部委託費と社内開発費の比率
- AIエージェント導入後の継続利用率や停止事例
- 成果連動型のコンサルティング・AI開発契約の広がり
前提条件
- 生成AIの性能向上と低価格化が続き、資料作成や分析の社内での代替が進む
- AIエージェントを外部で作り込むサービスが引き続き広がる
- 中小企業の人材不足が続き、外部への依存度が高い状態が当面続く
不確実性(見通しが変わる条件)
経営コンサルタントの倒産は、AIだけでなく、景気や補助金関連業務の変化、行政書士法改正など複数の要因の影響を受けます。倒産件数とAI普及の因果関係はデータで証明されたものではありません。ガートナーの予測は世界の企業全般を対象としたもので、日本企業に同じ割合が当てはまるとは限りません。
経営会議で確認したい3つのこと
- 当社が外部の専門家に払っている費用のうち、社内でAIを使えば代替できる作業はどれくらいあるか。
- 外部に作ってもらったAIの仕組みを、契約終了後に社内で直せる人はいるか。
- コンサルティングやAI開発の契約に、成果指標と知識の引き継ぎが明記されているか。
本記事は情報提供を目的としたもので、投資・法務・税務等の個別の助言ではありません。将来の見通しは執筆時点の情報と前提に基づく分析であり、結果を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、専門家にご相談ください。
用語の補足(7語)
- 東京商工リサーチ
- 企業の信用調査を行う国内の民間調査会社。企業情報のデータベースを持ち、倒産件数などの統計を定期的にまとめて公表している。
- ガートナー
- 米国に本社を置くIT分野の調査・助言会社。技術動向の分析や市場予測を企業向けに提供している。
- 生成AI
- 学習したデータをもとに、文章・画像・プログラムなどを新たに作り出すAI。対話形式で資料作成や要約などに使われる。
- AIエージェント
- 目標を与えると、自ら手順を考えて情報収集やツール操作などの作業を進めるAIの仕組み。
- FDE
- フォワード・デプロイド・エンジニアリングの略。ベンダーの技術者が顧客企業に入り込み、その業務に合わせてシステムを設計・開発する方式。
- 行政書士法
- 行政書士の資格や業務範囲を定めた法律。官公庁に出す書類の作成などを、報酬を得て行える者を原則として行政書士に限っている。
- 知的財産
- 発明やソフトウェア、デザイン、ノウハウなど、人の知的な活動から生まれた財産的な価値を持つもの。権利の帰属は契約で定めることが多い。
根拠資料・出典
一次情報に関する注記: ガートナーの予測については、原文のプレスリリースにアクセスできなかったため、報道・解説記事に基づいています。
一次資料
二次報道・参考
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月21日 08:00
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