65歳以上の就業者は943万人、働く人の7人に1人に 2031年に向けたシニア人材の処遇と職場づくりのシナリオ
総務省統計局が9月20日に公表した統計トピックスで、2025年の65歳以上の就業者は943万人と22年連続で増え、就業者全体の13.8%を占めました。65〜69歳の就業率は54.5%に達しています。一方、65歳以上の雇用者の76.1%は非正規です。シニアが「補助的な戦力」から「中核の一部」になっていく今後5年の職場の変化と、処遇の見直しの論点を示します。

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
3分で分かる要点
- 2025年の65歳以上の就業者は943万人で22年連続の増加、就業者全体の13.8%(約7人に1人)を占めました。
- 65〜69歳の就業率は54.5%、70〜74歳は36.2%で、いずれも過去最高です。
- 65歳以上の雇用者の76.1%は非正規で、仕事の中身と処遇の釣り合いが課題です。
- 1971年生まれが2031年に60歳を迎えるなど、今後5年は人数の多い世代が定年・役職定年に差しかかります。
経営への示唆
シニア人材は、すでに多くの職場で欠かせない戦力になっています。今後5年は人数の多い世代が定年や役職定年を迎えるため、「定年後は非正規で賃金を大きく下げる」という従来の運用のままでは、意欲の低下や技能の流出を招くおそれがあります。役割に応じた処遇への見直し、短時間勤務など働き方の選択肢、体力や健康に配慮した職場環境、若手への技能継承の仕組みを、人件費の見通しとあわせて設計し直すことが求められます。
統計が示すシニア就業の現在地
総務省統計局は2026年9月20日、敬老の日にちなんだ統計トピックス「統計からみた我が国の高齢者」を公表しました。2026年9月15日現在の65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29.6%と過去最高です。人口4000万人以上の39か国の中で最も高い水準です。
働き方の面では、2025年の65歳以上の就業者は943万人で、2004年から22年連続で増え、比較できる1968年以降で最多となりました。就業者全体に占める割合は13.8%で、およそ7人に1人が65歳以上です。年齢別の就業率は65〜69歳が54.5%、70〜74歳が36.2%、75歳以上が12.6%で、いずれも過去最高でした。
一方、働き方の中身には偏りがあります。65歳以上の役員を除く雇用者586万人のうち、正規の職員・従業員は140万人(23.9%)、非正規は446万人(76.1%)で、パート・アルバイトだけで半数を超えます。産業別では「卸売業,小売業」(131万人)、「医療,福祉」(122万人)、「サービス業」(108万人)に多く、「農業,林業」では就業者の50.6%が65歳以上です。
5年先に向けた構造
同じ資料が引用する国立社会保障・人口問題研究所の推計では、高齢化率は2030年に30.8%、第2次ベビーブーム期(1971〜74年)生まれが65歳以上となる2040年に34.8%まで上がります。1971年生まれは2031年に60歳を迎えるため、今後5年は、人数の多い世代が多くの企業で定年や役職定年の年齢に差しかかる時期にあたります。シニア人材をどう処遇し、どう力を発揮してもらうかは、人件費と技能継承の両面で経営課題になります。
今後どうなるか
以下は事実ではなく、統計と公的推計を前提にした見通しです。確率は示しません。
基本シナリオ(量は増えるが、処遇は追いつかない):65歳以上の就業者は2031年にかけて増え続け、就業者に占める割合も上がります。ただし多くは定年後の再雇用による非正規で、仕事の中身に対して賃金が大きく下がる例が残ります。現場では技能を持つシニアに支えられる職場が増える一方、意欲の低下や、若手への技能の引き継ぎの遅れが課題として表面化します。
上振れシナリオ(役割と成果に応じた処遇への移行):年齢ではなく役割と成果に応じて処遇する制度に切り替える企業が増え、60代を中核の戦力として正社員のまま活用する例が広がります。短時間勤務や在宅勤務などの選択肢が整い、70代前半まで働き続ける人が増えます。シニアが若手を指導する仕組みが整い、技能継承が進みます。
下振れシナリオ(健康・介護による離脱):シニア社員本人の健康問題や、配偶者・親の介護を理由とする離職が増え、就業者の伸びが鈍ります。体力面に配慮した職場環境が整わない業種では、労働災害の増加も懸念されます。シニアに頼っていた現場で、急に人手が抜ける事態が起きやすくなります。
予測対象期間
2026年11月〜2031年10月
変化を見極める指標
- 65歳以上の就業者数と年齢階級別就業率(総務省・労働力調査)
- 65歳以上の雇用者に占める非正規の割合(同)
- 高年齢者の雇用確保措置の実施状況(厚生労働省・高年齢者雇用状況等報告)
- 60歳以上の労働災害の発生状況(厚生労働省・労働災害統計)
- 高齢化率と年齢別人口(総務省・人口推計)
前提条件
- 高齢化は国立社会保障・人口問題研究所の推計(令和5年推計)に沿って進む。
- 人手不足が続き、企業がシニア人材を活用する動機は弱まらない。
- 年金の受給開始年齢や高年齢者雇用に関する制度に、急な変更はない。
- 健康寿命は緩やかに延び、70代前半まで働ける人の割合は大きく下がらない。
不確実性(見通しが変わる条件)
シニアの就業は本人の健康、家族の介護、年金や税制の設計、企業の処遇制度によって大きく変わります。景気が悪化すれば、再雇用や新規採用の枠が絞られる可能性もあります。「人数の多い世代が定年を迎える」という見方は出生年からの推論で、企業ごとの定年年齢や役職定年の制度によって時期は異なります。
明日の経営会議で問うべき3つのこと
- 今後5年で定年・役職定年を迎える社員は何人いて、その技能や顧客との関係を誰に引き継ぐ計画か。
- 再雇用後の処遇は、仕事の中身や成果と釣り合っているか。社員の意欲を把握しているか。
- シニア社員が健康を保ちながら働けるよう、作業環境や勤務時間の選択肢を整えているか。
本記事は情報提供を目的としたもので、投資・法務・税務等の個別の助言ではありません。将来の見通しは執筆時点の情報と前提に基づく分析であり、結果を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、専門家にご相談ください。
根拠資料・出典
一次資料
二次報道・参考
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月18日 23:16
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