政府のAI関連予算要求は2兆9,392億円、今年度予算の約5.8倍 中小企業のAX支援など新規132件、企業はどう備えるか
内閣府は2026年9月18日、2027年度(令和9年度)概算要求のAI関連予算を公表しました。要求額は2兆9,392億円と事項要求26件で、2026年度予算の5,027億円を大きく上回ります。中小企業のAI活用を後押しする約3,746億円の新規事業などが並びます。予算の中身と、企業が今から準備しておきたい点を整理します。

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
3分で分かる要点
- 内閣府が2026年9月18日に公表した2027年度のAI関連予算要求は2兆9,392億円と事項要求26件です。
- 2026年度のAI関連予算(当初)5,027億円と比べて大幅に多いものの、要求額であり、年末の予算編成で変わります。
- 中小企業等のAX促進に約3,746億円、マルチモーダル基盤モデル開発に約8,964億円などが並びます。
- 企業は予算成立までに業務の棚卸しと公募情報の入手経路づくりを進めておくのが現実的です。
経営への示唆
政府のAI関連予算は、研究開発だけでなく中小企業の業務効率化や人材育成にも広がっています。予算が成立すれば、AI導入に使える公的支援の選択肢が増える可能性がありますが、制度の詳細が決まるのはこれからです。経営者は、自社のどの業務にAIを使うかを先に整理し、支援策が出た時にすぐ判断できる状態にしておくことが重要です。また、業界特化型AIの実証に早く関わることは、データや知見を得る機会にもなります。
何が起きたか
内閣府は2026年9月18日、2027年度(令和9年度)予算の概算要求のうち、AI関連の予算をまとめて公表しました(内閣府 AI戦略(外部サイトが新しいタブで開きます))。概算要求とは、各省庁が翌年度に必要とする予算を財務省に求める段階の金額で、年末の政府予算案や国会審議を経て変わる可能性があります。
公表資料の主な内容は次のとおりです(内閣府「令和9年度AI関連予算要求について」(外部サイトが新しいタブで開きます))。
- 要求額は2兆9,392億円に加え、金額を示さない「事項要求」が26件。施策数は新規132件、継続193件
- 2026年度予算(当初)のAI関連額は5,027億円(新規20件、継続129件)
- 根拠として「第Ⅱ期 人工知能基本計画」と「日本成長戦略」(いずれも2026年7月閣議決定)を挙げ、バーティカルAI(特定の業界・業務に特化したAI)やフィジカルAI(ロボットなど現実世界で動くAI)の開発・活用を進め、日本全体のAIトランスフォーメーション(AX)を実現するとしています
主な事業と要求額(いずれも概数)は次のとおりです。
- 中小企業等を対象としたAX促進・業務効率化・DX支援(経済産業省、新規):約3,746億円
- AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデルの開発(経済産業省):約8,964億円
- AI for Scienceによる科学研究の革新(文部科学省):約3,789億円
- AIロボティクスの中核拠点の創設(経済産業省、新規):約1,333億円
- バーティカルAIの導入・開発利用の促進(内閣府、新規):約1,009億円
- 学校現場でのAI活用環境の整備(文部科学省):約884億円
- 政府主導のガバメントAI「源内」の整備・運用(デジタル庁):事項要求
なぜ起きたか
政府のAI関連予算は、ここ数年で急速に増えてきました。内閣府の集計では、2017年度の721億円から、2025年度は当初1,969億円と補正4,380億円の合計6,349億円、2026年度は当初予算だけで5,027億円になっています(内閣府「AI関連予算の推移」(外部サイトが新しいタブで開きます))。これまでは補正予算の比重が大きかったのに対し、2026年度以降は当初予算の段階で大きな額を計上する形に変わりつつあることが、数字から読み取れます。
今回の要求はその流れをさらに大きく進めるものです。ただし、2兆9,392億円は「要求額」であり、2026年度の5,027億円は「成立した予算額」です。同じ物差しではないため、最終的な規模は年末の予算編成で決まります。また資料の注記によれば、事業費の一部などAI関連分を切り出せない施策は合計額に含まれていません(内閣府資料(外部サイトが新しいタブで開きます))。
内容面では、基盤モデルの開発やAI for Scienceなど「AIを創る」領域に大きな金額が並ぶ一方、中小企業向けの新規事業や教育・人材育成など「AIを使う」「AIと協働する」領域にも項目が置かれています。資料はこれを「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4つの柱で整理しています。
何が変わるか
企業にとって最も身近なのは、中小企業等のAX促進に向けた約3,746億円の新規事業です。資料では事業の詳しい仕組み(補助金か、支援機関経由の伴走支援かなど)までは分かりませんが、予算が成立すれば、AI導入や業務効率化に使える公的支援の選択肢が増える可能性があります。
二つ目は、業界特化型AIの広がりです。内閣府のバーティカルAI関連事業(約1,009億円)や、フィジカルAI・ロボティクスへの大型投資は、製造・物流・医療・気象などの分野で、業界向けのAIサービスや実証の機会を増やすと考えられます。自社の業界が重点分野に入るかどうかで、受けられる支援や連携先の幅が変わります。
三つ目は人材です。教職員研修、大学・高専での実践的なAX人材の育成、経産省の「マナビDX」や地域企業との協働プログラムなどが並び、採用市場に出てくるAI人材の層は中長期的に厚くなる可能性があります。一方で、個々の人材育成事業の金額は数十億円規模にとどまり、企業内の育成を代替するほどではありません。
どう行動すべきか
予算成立までの数カ月は、次の準備に充てるのが現実的です。
- 自社の業務を棚卸しする:どの業務にAIを使えば時間やコストが減るのかを、部門ごとに書き出しておきます。公的支援の多くは、導入目的と効果の見込みを説明することが求められるため、事前の整理がそのまま申請準備になります。
- 公募情報の入手経路を決める:経済産業省・中小企業向け支援機関・業界団体の発表を誰が確認するかを決めます。概算要求の段階では制度の詳細は決まっていないため、年末の予算案と年明け以降の公募要領を追う必要があります。
- 業界のバーティカルAIの動きを把握する:自社の業界で国の実証や共同開発が始まる場合、早い段階で参加すればデータや知見を得やすくなります。
- 人材育成は自社で設計する:国の人材施策は裾野を広げるものです。自社の業務に合わせた社内研修や、AIの成果物を確認・修正できる人材の育成は、自社で計画しておく必要があります。
今後どうなるか
以下は事実ではなく、公表資料を踏まえた見通しです。確率は示しません。
- 基本シナリオ:年末の予算編成で要求額から一定程度絞り込まれつつも、AI関連予算は2026年度を上回る水準で成立します。中小企業向けのAX支援は2027年度に公募が始まり、業務効率化のためのAI導入が支援の対象として定着していきます。
- 上振れシナリオ:要求に近い規模で予算が成立し、バーティカルAIやフィジカルAIの実証が多くの業界で並行して進みます。業界ごとの共通データ基盤や評価の仕組みが整い、中小企業でも業界向けAIを使いやすくなります。
- 下振れシナリオ:財政事情や優先順位の見直しで予算が大きく削られる、あるいは事業の執行が遅れ、現場に支援が届くまで時間がかかります。この場合、AI活用の進み方は企業の自己投資の力に左右され、規模による差が広がります。
予測対象期間
2026年10月〜2029年3月
変化を見極める指標
- 2026年末に閣議決定される2027年度政府予算案のAI関連額
- 中小企業等のAX促進事業の公募要領と開始時期
- 内閣府のバーティカルAI領域別戦略の取りまとめ状況
- AI関連の補正予算の有無と規模
- 業界ごとのAI実証事業の採択状況
前提条件
- 概算要求の大枠(バーティカルAI・フィジカルAI・中小企業AX支援)が予算案でも維持される
- 人工知能基本計画が当面毎年改定され、AI関連予算の重点が大きく変わらない
- 企業のAI活用への関心が引き続き高い
不確実性(見通しが変わる条件)
概算要求は予算の確定額ではなく、年末の予算編成で増減します。事項要求26件の金額は不明で、AI関連分を切り出せない施策も合計に含まれていません。中小企業向け事業の具体的な支援方法(補助率、対象経費など)は公表資料からは分からず、企業にとっての使い勝手は今後の制度設計に左右されます。
明日の経営会議で問うべき3つのこと
- 当社でAIを使えば効果が出る業務を、部門ごとに説明できる状態になっているか。
- 国や支援機関の公募情報を、社内の誰が確認し、判断につなげるのか決まっているか。
- 当社の業界でバーティカルAIの実証や共同開発が始まった場合、参加を検討する体制はあるか。
本記事は情報提供を目的としたもので、投資・法務・税務等の個別の助言ではありません。将来の見通しは執筆時点の情報と前提に基づく分析であり、結果を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、専門家にご相談ください。
根拠資料・出典
一次資料
- 一次資料AI戦略
- 一次資料令和9年度AI関連予算要求について
- 一次資料AI関連予算の推移(平成29年度〜令和8年度)
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年10月18日 22:38
誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。