「人の承認なしでAIが判断を実行」を企業の40%が中程度以上で容認、売上増の実感は28% Deloitte調査
25か国の幹部ら3,500人に聞いた2026年5〜6月の調査。AIの権限拡大に、責任と統制の整備が追いついていない
Deloitteは10月29日、AIが人の承認なしに判断や行動を実行することを、40%の企業が少なくとも中程度に認めているとの調査を公表しました。一方、責任の所在が不明確との回答は23%、AIによる売上増を実感する企業は28%です。AIに任せる範囲の広がりに、統制と収益化が追いついていない姿を示します。
まず、これだけ押さえたい
- 25か国の幹部ら3,500人への調査で、40%の企業がAIによる承認なしの判断・実行を少なくとも中程度に認めています。
- 責任の所在が不明確との回答は23%あり、複数のAIエージェントを動かす企業の半数は統制が基本的な水準以下です。
- 速さの効果は81%が実感する一方、売上増は28%(1月の報告は20%)で、投資回収率の数値は公表されていません。
押さえておきたい数字
承認なしのAI実行を少なくとも中程度に容認
40%
AIを実用中の企業の幹部ら3,500人の回答
基準時点: 2026年5〜6月調査
出典: Deloitte「The State of AI in the Enterprise」(外部サイトが新しいタブで開きます)
AIの責任の所在が不明確
23%
AIが悪い結果を出した場合の責任について
基準時点: 2026年5〜6月調査
出典: Deloitte「The State of AI in the Enterprise」(外部サイトが新しいタブで開きます)
AIによる売上増を実感
28%
2026年1月の報告では20%
基準時点: 2026年5〜6月調査
経営への示唆編集部の分析
この調査はAIを実用している企業に限った自己申告であり、日本企業の標準を示すものではありません。それでも、AIが「提案」から「実行」へ進むほど、権限と責任の設計が経営の問題になることを示しています。編集部は、AIに実行を任せる業務を増やす前に、操作ごとの承認の要否と責任者を定め、あわせて費用を業務単位で把握することが、投資判断の土台になると考えます。
この記事の目次

画像: AI生成のイメージ画像(Codexで作成)。実際の場面ではありません
調査で何が分かったのか
Deloitteが10月29日に公表した調査で、40%の企業が、AIが人の承認なしに判断や行動を実行することを少なくとも中程度に認めていると答えました。 一方、AIが悪い結果を出したときの責任の所在が不明確だとする回答も23%ありました(Deloitte 発表(外部サイトが新しいタブで開きます))。
調査の実施は2026年5〜6月で、25か国・6業種の3,500人が回答しました。取締役や最高幹部からディレクター級までの幹部で、ITと事業部門がほぼ半数ずつです。国別の回答者は米国が1,200人で最も多く、日本は100人でした(報告書(外部サイトが新しいタブで開きます))。
40%という数字はどう読むべきか
全企業の平均ではなく、AIをすでに日常業務で使っている企業の自己申告と読むのが適切です。 回答企業はすべて、実用段階のAIを1件以上持っています。報告書自身も、AI活用の先端にいる企業の姿を捉える調査だと位置づけています。
質問は「人の承認なしにAIが判断や行動をどの程度実行しているか」というものです。「中程度」の定義や、対象となる業務の内訳は、確認できた公表資料には示されていません。日本企業だけの集計も見当たりません。
統制はどこまで追いついているのか
報告書は、AIの権限拡大に統制が追いついていないとみています。 同じ業務工程で複数のAIエージェントを動かす企業(回答2,372件)のうち、半数は正式な統制がないか、基本的な監視にとどまります。完全に統制できているとの回答は9%でした。
AIが悪い結果を出したときの責任は、担当チームとする回答が36%、全社の統制部門が24%、指示を入力した従業員が10%でした。報告書は、どの操作に事前承認を求め、どれを事後確認とし、どれを即座に上位へ報告するかを企業が決める必要があると指摘しています。
投資対効果の明暗はどこに出ているのか
速さの効果は広がっている一方、売上まで届いた企業は少数です。 発表は「ROI(投資対効果)の清算」と題していますが、投資回収率や回収期間の数値は示していません。
| 回答の内容 | 割合 | 2026年1月の報告 |
|---|---|---|
| 意思決定と実行が速くなった | 81% | — |
| 効率・生産性の向上を実感 | 74% | 66% |
| コスト削減を実感 | 45% | 40% |
| 売上増を実感 | 28% | 20% |
| AIで事業を深く変革している | 25% | — |
費用の把握にも差があります。AI利用の総額を追う企業は71%ですが、処理量(トークン)を追うのは51%、単位あたりの費用を追うのは44%です。また60%が職務をAI前提で見直した一方、その変更が広範または全面的だとする回答は15%、意思決定の権限が大きく変わったとする回答も15%でした(報告書(外部サイトが新しいタブで開きます))。
編集部の分析
編集部は、この調査で重要なのは40%という水準そのものより、任せる範囲と責任の定義のずれだと考えます。AIに実行を任せる前に、操作ごとの承認の要否と、問題が起きたときの責任者を決めておくことが、効果の検証にもつながります。
経営会議で確認したい3つのこと
- 自社のAIが人の承認なしに実行している操作を一覧にできるか。そのうち送信・支払い・契約・削除に当たるものはどれか。
- AIが悪い結果を出したとき、責任を負う部門や担当者を業務ごとに説明できるか。
- AIの費用を総額だけでなく、業務や処理の単位で把握し、売上や原価の変化と結びつけて検証しているか。
用語の補足(3語)
- AIエージェント
- 指示に答えるだけでなく、目的に向けて手順を考え、アプリの操作などを続けて実行するAIの仕組み。
- ROI(投資対効果)
- 投じた費用に対してどれだけの成果が得られたかを示す考え方。この調査では具体的な回収率ではなく、効率や売上など実感した効果の割合を尋ねている。
- トークン
- 生成AIの処理量の単位。文章を細かく区切ったもので、多くのサービスで利用料金の基準になる。
根拠資料・出典
一次資料
訂正履歴
訂正はありません。最終更新: 2026年11月4日 17:50
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